

2009年7月8日~9日にかけて行った山形での記録をお届けします。
この、さくらんぼとラ・フランス畑に囲まれ、突如ポツンと現れる大工場の中で、
世界で最もアバンギャルドかつキュートなスニーカー、
ロングトールサリーは生み出されているのです。
サリーのファッション的な革新性や意義という点では、
ブログなどで、いままで長い時間をかけてお伝えしてきましたが、
製品として、純粋な 「モノ」 としてのサリーが持つ価値というのは、
今まで、イマイチ伝わっていなかったかもしれません。
「本当に価値のあるモノを、国内で、適正な数だけ作ること!」
そういった、産業構造の上でのサリーが持つ新しさ、
可能性も含めて、伝えられたらいいなと思います。
すでに購入して届いている方はもちろん、
今まさに、届くのを心待ちにしてくれている方、
またこれから購入を検討してくれている方、
あるいは単純に「モノ作り」に興味のある方…
誰にとっても、サリーが持つ価値が、
より一層深いものになれば嬉しいです。

ってことで、早速出てきました、サリー。
作り途中なので、仮のヒモが通してあります。
すでに完成しているかのように見えますが…
実はアウトソールが付いてません(^^;
なぜなら、今回はコイツを引っぺがして、
かなり大掛かりな修正をする必要があるからです。
(その様子を直接見るために、来たってわけですね。)
それではご一緒に、一枚一枚、
引っぺがしてまいりましょう。
ひっひっひ。
む、無残……!!!!(^^;
いやでも実際の靴のつくりっていうのは、
こんなふうになっているんですよ~。
ヒール部分まで丸裸に。
サリーにはラスト(木型)に合わせた、
このようなEVA(硬質スポンジ)製のヒールが入っています。
サリーではまずアッパーを作り、このヒール部分をアッパーに
包み込んで「吊り込み」という作業をしてから、
合成ゴムのアウトソールを接着するという作業手順になります。
ざっくり言うとそんな感じなのですが、
その手順の一つ一つには、
並々ならない労力がかけられているわけで…。
「吊り込み」という作業と共に、詳しくは後述します。
で、今回の修正のポイントはこのカカト部分。
エナメルという、熱形成にほとんど向かない素材を、
サリーのように特に立体的で丸みを帯びたシルエットに
合わせているため、カカト部分に救い難い
致命的なシワが寄ってしまっていたのです。
(ちょうど今、縫製がほどかれている部分です。)
オーソドックスなスムースレザーを使った白の場合は、
形成後に熱いコテを当てることで、
ほとんど問題なくそのシワを修正することができます。
しかしエナメルでそれをやってしまうと、
エナメル特有のツヤが失われてしまう上に、
それほどの効果は得られません。
かと言って、ヒール部分に接着剤でべったりと接着しようとしても、
エナメルは素材の性質上、これまた運命的なシワができてしまうのです。
つまり、もともとのアッパーのパターンを修正して(縮めて)、
さらに吊り込みの工程で全体のバランスを損なわないように、
極力シワができないような、
極めて緻密で熟練のカンを要する作業工程が必要である…
という結論に、至ったわけです。
(余談ですが、さらに熱に弱い白エナメルを使うことは、
現実的にほとんど不可能であったのです(^^;
結果としてできた白スムースサリーがめちゃめちゃカッコよかったので、
万事まるく収まりましたけど!)
その模様は後述するとして…
ひとまず、普通ではほぼ見ることができない、
国内有数の靴工場の社会化見学に出発しましょう!
ずらりと並んだ、専門的なミシンや各種機械。
ミシンと言っても、家庭用や工業用、
皮革用などいろいろあるように、
靴用のミシンというだけでも、細かい工程に合わせて、
本当に数多くのミシンが揃っています。
この設備からしても、この工場のポテンシャルの高さが
窺えるというものです(^^;
「工場」とか、「団地」シリーズに出てきそうな写真ですね。
そんな職人気質な現場で、うちのあまりにもポップなサリーが、
真面目に作られてるっていう対比が、なんともファニー(笑)
もともとが紳士靴にとても強い工場なので、
その技術力と設備は、ちょっと右に出る者がいません。
(イギリスの超老舗紳士靴ブランドとの、技術提携もしています。)
そういった、伝統的な紳士靴の技術やノウハウを駆使して、
今またメンズの歴史に大きな指標を打ちたてようとしている
サリーが作られているというのは、
なんだか壮大な歴史を感じさせるロマンスが漂ってる気がしません?
じゃあなんでそんな工場が、わざわざサリーみたいなやっかいな、
前例のない製品を手掛けているかと言えば、
それはこの工場の(主に社長さんの)先進性を重んじる、
とても素晴らしい経営方針のもとに成り立っているわけですが…
これも長くなるので、詳しくはまた後ほど。
では、「一足の靴が出来上がるまで」を、
順番にレポートしていきましょう。
まず、靴作りのカナメは、なんと言ってもラスト(木型)です。
ラストの仕上がりが、その靴の印象を決めると言っても、
過言じゃありません。
本当に微妙な違いが、出来上がった靴を「超ヒット商品」と
「セール行き」に分けるなんてことも、おそらく日常茶飯事です。
ゆえに、工場には本当にたくさんのラストが溢れています。
とんがったのや丸っこいの、さらにそのサイズ違い…
ほんとキリがありません(^^;
ただそれだけあってもサリーみたいな10cmヒールの
メンズサイズのラストは存在しないので、
一からオリジナルで作ったわけでありますっ。
ずら~っと並んだ木型。
ここは木型を作る部屋で、ここに並んでいるのは、
文字通り木から削りだした「木」型です。
この工場は、一足からの特注シューズなんかも作っているので、
ここに並んでいる木型の中には、某大リーガー○チ○ー選手のスパイクや、
某プロ野球選手○ん○うさんの特注シューズ(ヒール7cm!)や、
某プロゴルファー○ちゃんのゴルフシューズの木型なんかが、
本当に何気なく置いてあったりもします。
上に山積みになっているようなプラスチックっぽいものは、
いわゆる「モールド」と呼ばれるもので、
生ものの木で微妙な調整・修正を加えたあとで、
実際に製作するときに必要になるモノです。
作業台。なんでこう、プロが使ってるモノとか場所とかって、
カッコいいんでしょうね。
本邦初公開、ロングトールサリーの木型!!
木型からしてすでに異彩を放ってる!(笑)
これは担当の職人さんに、
ぼくからの要望を伝えて直接削ってもらったものです。
トゥは、尖りすぎず、丸っこすぎずのエッグトゥ、
スニーカー特有のぽってり感を出すため、
少しだけボリュームを盛っています。
全体のシルエットは、あくまでシャープに、美しく!
もう、ほんとに「木」です。
この状態から、削っていくわけですが…
最初から手でやっていては恐ろしい時間がかかってしまうので、
この機械で、ある程度のところまで調節していきます。
ただし、やはり最後はハンドです。
経験がものを言う工程ですね。
これが、サリーのモールド(25cm)。
上の木型は27cmのものですが、
サリーは僕が履く27cmがサンプルサイズだったため、
それを基準にグレーディングして、
他のサイズのモールドを起こしていきます。
あまりに美しいので、しつこくもう一枚。
木型がすでに、凛とした表情を湛えています。
これからの、2010年代の男子のあるべき姿、理想像を、
そのまま具現化してしまった感さえありますね。
「工場」シリーズ。趣があるなぁ。
ところどころに、モールドが山積みになっています。
靴フェチにとっては、天国のような場所かもしれません。
扱っている製品の数が半端でないため、
資材置き場もものすごい。
何気なく置かれているモノが…
全部、ご存知vibram製のソールであったり。
いわゆるレッドウィングを頂点とするアメカジ系とか、
トレッキング系のブーツの需要が多いみたいなので
(つまり、これから店頭に並ぶ商品)、
ビブラムソールもいっぱいありました。
これだけでも高そー。
所変わって、パターン(型紙)の制作室。
木型が靴の骨の部分だとしたら、
アッパーのパターンは目に見える肉の部分。
これも、とても重要な工程です。
靴箱の倉庫。
誰もが知ってる有名ブランドの靴箱でぎっちり。
(さすがにうちみたいなプラスチックはいないけどね!)
あなたが今お履きになっているそのブランドの靴も、
もともとはここから届けられてるなんてことも、
たぶんザラにあると思いますよ(笑)
それでは次回からは、いよいよアッパーの裁断、
そして縫製工程に入ってまいります。